| 努力の結晶 |
「……努力すれば、できないことなんてありませんよね」 真剣な眼差しで見つめてくるトーマスの気迫に、葉っぱをくわえたジョアンは思わず後図さる。 「ま、まあそうだろうけどよ……どうしたんだ、一体」 ジョアンの武術指南所にトーマスが来るのは、かなり珍しい。いや、むしろジョアンがちゃんと起きていてトーマスの 相手をしていることが珍しいというべきか。 「是非、覚えたいスキルがあるんです。ううん、覚えたいというより、覚えてもらいたいものなんですけど」 はっきりしないトーマスの物言いに、ジョアンは首を傾げる。 「まあ、俺が教えられるスキルなら、教えてやるけどよ。一体誰に、何のスキルをつけるんだ?」 「アーニーさんに言ったら、自分じゃ教えられないって言われたもので」 「だから、何のスキルだって聞いてるんだよ」 短気なジョアンが思わず声を荒げる。トーマスは一瞬声にびくっとしたが、意を決したようにジョアンに近寄ると、 爪先立ちになってジョアンの耳元に口を近づけた。 「……セシルに、料理のスキルを……」 「うちじゃやってねえ。」 「……やっぱり駄目ですか……」 「武術指南所で料理のスキルがあがるなら、世の中の奥様方はこぞってやってくるだろうよ。他を当たりな」 至極ごもっともなジョアンの言葉に、がっくりと肩を落とすトーマス。どうやら、訳があるようだ。 「しかし一体、なんでセシルに料理のスキルなんだ?」 「その……先日、セシルの手料理を振舞われたんですけど……ちょっと僕には……」 言葉を濁すトーマス。しかし、そのニュアンスからなんとなく光景が目に浮かんで、ジョアンは思わず吹き出しそう になる。 「……なるほどな」 「まずいっていうわけじゃないんですけど、味付けが強烈過ぎて、ちょっと……ひっくり返っちゃうくらい、凄かった もので」 トーマスは大の甘党。そしてセシルは大の辛党だ。そのセシルが作る料理がトーマスの口にあうわけがなかった。 「でも、別に食べなきゃ済むことだろ?」 毎日の食事をセシルが作るわけではないのだ。特に問題はないように思えるのだが、トーマスは益々深刻な顔を する。 「そうでもないんですよ。城内に人が増えてきたんで、食堂を作る話が出て、専任の料理人が見つかるまでは当番 制にしようって話になったんです。となると……」 なるほど、それは問題である。ジョアンも真剣にならなければ、と葉っぱを地面に落として考えを巡らせ始めた。 「アンヌさんに頼んだらどうだ?」 カラヤ族のアンヌは、城内の酒場を切り盛りしているきっぷのいい女性だ。酒場では簡単な食事も出しているから、 料理はできると思っていいだろう。 しかしトーマスは首を振る。 「言ってみたんですけど、おつまみ程度のものならともかく、ちゃんとした料理は教えられないって」 確かに、酒場で出すのは酒のつまみ程度だ。それらはトーマスの苦手な辛口のものが多い。 「セバスチャンは?もともと、料理作ってたのはアイツだから、腕はいい方だと思うぜ?」 またまた首を横に振るトーマス。 「忙しいからって断られちゃいました」 ジョアンに言われるまでもなく、城内のこれという人材はほとんど当たってみたのである。 「となると……うーん」 腕組みをして唸るジョアン。トーマスも声を掛けそびれている人間がいないか、必死に思い出す。 しばらく二人して考え込んだ結果、導き出された結論は 「……専任の料理人を探した方が早そうだな」 「ですね。僕、ちょっと探してきます。今のところはこれといって仕事もないし」 決意を胸に、すっくと立ち上がるトーマス。 かくして、料理人獲得の為、トーマスの新たな旅が始まった・・・・・・。 そして、念願の料理人メイミを獲得し、城内にレストランが出来上がったのち、仲良くメイミに料理を教わるトーマスと セシルの姿があったとか、なかったとか……。 -完- |
コックやヒーリングは固有スキルなので、指南所で覚えられないんですよね(^_^;) セシルは大の辛党、トーマスは大の甘党なので、どっちも両極端な料理を作ってるみたいです(by壁新聞) まあ、ナナミの料理に比べればどっちも食べられるものなだけマシなんでしょうが。 |
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