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着太りする男

「ナッシュさんって、着太りするタイプですねっ」

 突然の爆弾発言に、ナッシュは危うく手にしていた串を取り落としそうになる。

「な、なんだって?」

 貴重な夕飯を死守しながら尋ね返すナッシュに、ワカバはにこにこ顔で繰り返してくれた。

「だから、ナッシュさんって着太りするタイプですねって」

「き、着太り……って……なあ」

 焚き火を囲んでの夕飯中、いつも着込んでいる分厚い外套は、今だけ脱いでそばにたたんである。

 そんな最中の爆弾発言だった。

「だって、上着脱いだら凄いひきしまった体をしてるんですもん。鍛えてますよねえ、筋肉。いいなあ」

 どこか着眼点が普通の少女と違うのは、ワカバだから仕方がない。

「そ、そうか?」

 何と答えていいか分からず、曖昧な笑いでごまかすナッシュ。

「でも、なんでそんな上着着てるんですか?」

「そんなにおかしいか?」

「だって、暑くないですか?私のこの格好でちょうどいいくらいだと思うんですけど」

 そういうワカバは、橙色の道着を身に纏っている。薄手で動きやすそうなその格好は、確かに

涼しそうだ。

「色んなところに武器を仕込んでるから、仕方ないのさ。下は半袖だから、そんなに暑くないよ」

 そう、背中に隠したグローサー・フルスを筆頭に、両腕にもワイヤーやスパイクを仕込んでいるし、

小刀や爆薬なども色々な所に隠してある。それを覆い隠すのに外套は必需品だ。

「へえ、そうなんですかあ。隠し武器なんて、かっこいいですねえ」

 目をキラキラさせるワカバ。

「かっこいい、か」

 苦笑するナッシュ。隠し武器は、特務員であるナッシュにとって必需品であるとともに、自分が真っ当

な人間でないことの証明のようなものだ。

「しかし、着太りとはね」

 意外な感想に思わず笑ってしまうナッシュに、ワカバは恥ずかしそうに謝って来る。

「ご、ごめんなさい、私ってば思ったまま口にしちゃうの、悪い癖ですよね。直さなきゃなあって思ってる

んですけど……」

「いや、いいさ。でも確かに、これじゃ暑っ苦しいよな。今度上着を新調する時は、ちょっと考えるか」




 そして十五年後。

 ゼクセン騎士団長クリス・ライトフェローの前に現れたナッシュが、動きやすい上着を着ていたのは、

ワカバの一言があったからとか、なかったとか……。



-完-

 実は、双蛇剣グローサー・フルスを持つ必要がなくなったから、丈の長い外套を着ないで済むように

なった、からだったりして(^_^;)

 IIIでのナッシュの武器はタイプ手裏剣となってますが、これはスパイクなんでしょうかね?

 スパイクって、棒手裏剣みたいなもんだし。

 外伝Vol.1の裏ルートは、ワカバちゃんの元気はつらつさに和みました(^o^)丿
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